チベットで騒乱が起きているときにちょうど北京で第二回になる日中ジャーナリスト会議に参加していた田原総一郎氏が聖火リレーの妨害の背景に欧米の中国憎しがあると書いている。あまりの「トンデモ」ぶりに、驚き、出勤前に書いている。
今回の騒乱は中国側が仕掛けたものではなく、死者の数にも中国政府とチベット亡命政府との間に隔たりがあると書く。さらに、前の記事でも先日の日経新聞にも騒乱後のラサに外国人記者団を入れたのは快挙であり、ひょっとしたら自分たちのアドバイスがあったからではないかと書く能天気ぶり。
さらに日本のジャーナリストのために夏副主席が面会してくれたが、いかにジャーナリズムを大切に考えているかのあらわれだとも書いている。
驚いたのは日経BPNetの『田原総一郎の政財界「ここだけの話」』の
前回の記事の続きとして出ている次の文章。
相次ぐ聖火リレーの妨害抗議 なぜ中国は反発されるのか - ビジネススタイル - nikkei BPnet
中国という国自体が憎まれている中国としては、アジア開催が3回目となる北京五輪を何としても成功させたい。このオリンピックの成功が胡錦濤政権の命運にも非常に大きく関わっている。チベット騒乱は中国にとって何のメリットもなく、むしろデメリットばかり大きい。もっとも、騒乱が大きくなったということは、いずれにせよ、中国の鎮め方に問題があった、失敗したということはいえるだろう。それにしても、これほどまでに中国への反発が広がっているのはなぜなのか。僕は、チベット騒乱という問題だけではなく、中国という国そのものが憎まれているような気がしてならない。
ここまでの問題になっているのは人権という問題だということがわかっていない。田原氏は盛んに中国も誤りを認めている「文化大革命」のことは書くが、世界が中国の人権無視に抗議した天安門事件のことを忘れたのだろうか、そのことは書かない。忘れたはずはないのだが…。
さらに結論部。
欧米の抗議の裏には恐怖心も
北京五輪に対する反発が極めて強い中で、しかし、アメリカのブッシュ大統領も中国を「責任あるステークホルダーだ」と言っている。ヨーロッパの国々も輸出輸入の関係が増大している中国の経済力をもはや無視できない状況だ。
しかも、同じように経済発展を続けているインドやブラジルと違って、中国はこの10年間で軍事費を2桁増強している。人口が非常に多く、軍事費も拡大、経済的にも大発展している中国に対しては、ジェラシーと同時に、恐怖心もあるのかもしれない。
かつて日本が高度経済成長を続けていたとき、アメリカは日本を「我々とは全く異質の国である」とし、クリントン大統領が「日本はソ連に代わる新しい敵である」と言って、すさまじい日米経済戦争が起きた。
経済的にも、日本が世界一素晴らしい技術を持ったとき、かならず欧米はこれを拒否する。NHKが開発したハイビジョンを世界標準にしようとしたら、アメリカが断固拒否した。
最後に出してきたのが日本も含めた欧米の黄禍論が今回の背景にあると結論する。今回の事件は欧米が怒っているのではなく、世界が怒っているのだと思うけど、田原さん。
もともと中国びいきなのか知らないけど、今回の記事はひどすぎる。ヨーロッパは天然ガスパイプライン問題でプーチンに対してかなりの警戒心があると思う。チェチェン紛争が背景にあるといわれるリトビネンコ暗殺事件(プーチンの告発者であった元ロシア工作員リトビネンコ氏がロンドンで放射性物質を飲まされて暗殺された事件)などはヨーロッパがプーチンに警戒心を持つに十分な事件だった。
今世界は、人権がはく奪されているチベットの人々のために怒っているのだ。オリンピックが平和の祭典だからこそ開催国である中国はこのことを真剣に受け止めなければならない。
こんな事件も報道されている。
Snapshot:
テロ組織摘発とチベット騒乱の関係は? ついでながらチベット騒乱関係のニュースをフランスの通信社AFPが配信した記事で拾ったこちらも見てください。
Snapshot:
チベット騒乱 <蛇足>日本の人権音痴ぶりが北朝鮮の拉致事件でも
クローズアップされた。ドキュメンタリー『めぐみ-引き裂かれた家族の30年』(原題:ABDUCTION:The Megumi Yokota Story)を撮ったのはアメリカ人の監督だ。
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