留学生新聞ニュースWEEKLY
2008.3.26
●「留学」「就学」の一本化に 法務省は慎重姿勢
先日行われた自民党の留学生等特別委員会で、現在大学や専門学校などで学ぶ「留学生」と、日本語学校で学ぶ「就学生」に分かれている在留資格について「留学と就学を区別するのはおかしい。1つにまとめるべき」などといった意見が複数出た。これを受けて、有力メディアが「留学生、就学生と一本化へ」などと報じたが、実際にすんなりと一本化が実現するかどうかは、非常に不透明な状況となっている。
この問題について『留学生新聞』のインタビューを受けた法務省関係筋は「各方面から要望されている話なので引き続き検討しているが、実施の有無も含め、あくまでも検討段階」と述べ、具体的なタイムテーブルはなく、今後の状況次第では「留学」と「就学」の両在留資格がそのまま現状維持となる可能性もにじませた。
一本化実現へのハードルとして、同関係者は「不法残留率と犯罪率」を挙げ、「ここ数年、特に就学生の犯罪件数などは絶対数としては減少してきているが、外国人登録者数との比較など他基準でみた場合に、絶対に大丈夫な状況といえるのか」と現状に疑問を呈し、引き続き厳格な入国審査を堅持する方針を示唆した。
同関係者は近い将来、仮に「留学」「就学」の一本化が実現した場合の審査基準についても、大学と日本語学校、あるいは入国・在留管理の優れた日本語学校とそうでない日本語学校との取り扱いが同一になることには否定的な見解を示し、「運用上の問題なので、運用面で対応する」とも述べ、同じ「留学」ビザとなった後も、各校の在留状況に基づいて審査する現行の方針を変えない考えを明言した。
■日振協は「留学」昇格へ期待
一方で全国の日本語学校が加盟する(財)日本語教育振興協会の関係者は『留学生新聞』の取材に対し、「(外国人向けに設けられている)27の在留資格を全般的に見直す法務省の作業の一環として『留学』『就学』の一本化が議論されていると聞いている。当協会ではかなり以前から日本語学校生への『留学』資格付与を求めている。現時点ではその働きかけが(今回の動きに)どれほど奏功したかは何とも言えない」としている。日本語教育振興協会は、就学生への通学定期券の付与やアルバイト(資格外活動許可)条件の緩和などをかねてから訴え、これらは段階的に実現しており、「留学」「就学」の格差解消の総仕上げとも言える在留資格の一本化を歓迎する立場は明白だ。
■「30万人」達成へ 首相が留学生の受け入れ増を指示
福田首相は安倍前内閣から引き継いだ教育改革に関連して、「教育再生会議」の後継組織となる「教育再生懇談会」を立ち上げ、25日、初会合に臨んだ。首相は今国会の所信表明演説において留学生の「受け入れ30万人計画」を打ち出したが、首相就任前から留学生の受け入れ増を訴えてきた首相の同問題への関心は高く、この日の初会合でも、自ら「留学生の受け入れ拡大」を重要な検討課題の1つとして指示した模様だ。
一方で、自民党の部会で「留学」と「就学」の在留資格を一本化すべしという意見が出されたことに関連し、福田首相が目標として打ち出した留学生「30万人」達成へ向けて党側から援護射撃したのではないかといった声も出ている。昨年5月現在、日本で学ぶ留学生総数は11万8498名で、これに「就学生」資格を持つ日本語学校生がが加わると、新たな「留学生」資格の保持者総数は、目標の半分である15万人を突破することになる。
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